血液中のアミノ酸の濃度などから、がんにかかっているかや、かかりやすさを判定する「リスク検査」が広がってきた。少量の採血で早期がんの発見につなげられるとして、人間ドックなどで取り入れる医療機関も多い。その一つを記者が体験した。 (山本真嗣)

 体験したのは食品大手の味の素(東京)が、二〇一一年に実用化した「アミノインデックスがんリスクスクリーニング(AICS)」。血液中のアミノ酸の濃度から臓器別にがんの確率をA(低い)、B(やや高い)、C(高い)で評価する。全国約八百九十の医療機関が導入しているという。検査は従来の腫瘍マーカーと同様、採血だけだ。

 担当の安東敏彦さん(58)によると、体のタンパク質は二十五種類のアミノ酸で構成。健康時は血液中の濃度は一定だが、病気になるとバランスが崩れることに着目し、がんの種類ごとにパターンを割り出した。現在は胃、肺、大腸、前立腺、乳腺、子宮・卵巣を調べられ、近く膵臓(すいぞう)も対象に加える予定。

 安東さんは「従来の腫瘍マーカーは、がん細胞が出す物質を捉えるので、進行した段階でないと見つけるのは難しい。体内のアミノ酸のバランスは早期がんでも崩れるので、より早い発見につながる」。一般の人ががんである確率は千人に一人(0・1%)といわれるが、ランクCの人はそれより四〜一一・六倍高く、精密検査を勧めている。

 ただ、腫瘍マーカーが直接、がん診断に使えるのに対し、AICSはあくまで可能性の検査。「Cだから必ずがんというわけではなく、Aでも安心ということではない」と念を押す。

 AICSを人間ドックなどのオプションで取り扱う名鉄病院(名古屋市西区)で、記者は昨年十一月、五ミリリットルを採血し、半月後に結果が郵送で届いた。肺、大腸、前立腺はAだったが、胃はB。症状があれば早めの消化器科の受診と、一年後の再検査を勧める医師の助言も同封してあった。

 健診担当の医師、加藤裕美佳さん(51)は「AICSの結果だけで一喜一憂しても意味がない。他の検査と一緒に総合的に判断することが大切」。同病院は二年前から導入し、昨年は前年の倍の百人が受診。胃でランクCとなったうちの一人が精密検査の結果、早期がんが見つかった。

 がんの“なりやすさ”を調べる検査も。認定NPO法人「日本胃がん予知・診断・治療研究機構」(東京)が提唱する「ABC検診」は、胃がんと関わりの深いピロリ菌と胃炎の有無を血液中の抗体と消化酵素のもとの物質から調べ、胃がんになりやすいかどうかを四段階で判定する。

 全国の約百四十市町村と企業百十社以上が健診に導入。〇八年から住民健診に取り入れた東京都目黒区では、一二年までに約三万人が受診し、精密検査に回った約五十人に早期胃がんが見つかった。同機構理事長の三木一正さん(72)は「がんのリスクを具体的に明らかにすることで、精密検査への動機づけにつながる」と指摘。ただ、「結果の意味を正しく医療機関などが受診者に伝え、フォローすることが必要」と話す。

 両検査ともに、自由診療なので価格は医療機関ごとに異なり、AICSは一万八千〜二万五千円、ABC検査は数千円。一部を自治体や健康保険組合などが補助するケースもある。



引用元:
がんリスク検査 採血で早期発見へ(東京新聞‎)