【田村隆】 「妊婦健診を受ける病院で出産できないなんて」――。結婚で東京から都留市に移り、一昨年に出産した女性(33)は、山梨のお産事情を知って驚いた。
 自宅近くの都留市立病院では妊婦健診は受けられるが、分娩(ぶんべん)は受け付けていない。出産ができる付近の病院は自宅から車で20分程度かかる山梨赤十字病院(富士河口湖町)と、さらに時間がかかる富士吉田市立病院だった。
 都留市立病院で妊婦健診を受けて、出産だけ別の病院で行う選択肢もあったが、「できれば東京の姉と同じように、子どもが生まれるまで同じ医師に診てもらいたい」と思った。そこで、妊婦健診の時から富士吉田市立病院まで通った。
 出産後、母親教室で12人の「ママ友」ができた。その多くが「妊婦は急に眠たくなることがあるでしょ。運転中に睡魔が襲ったらどうしようと心配だった」「首が据わらない赤ちゃんをベッド型チャイルドシートに寝かせ、1カ月健診に連れていくのにヒヤヒヤしたよ」などと、車での通院の不安を口にしたという。
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 地域の病院が妊婦健診を担当し、拠点病院が分娩を受け持つ分業方式は「産科セミオープンシステム」と呼ばれる。産科医の数が足りない中で、出産の安全面を考慮した方式で、拠点病院に産科医を集約することで、出産時の大量出血などの緊急事態に複数の医師で対応できる。
 県医務課によると、県内で分娩を取り扱う医療機関は現在15カ所。うち13カ所が甲府市とその周辺に集中している。都留市立病院も以前は分娩を取り扱っていたが、2008年春に休止。富士北麓(ほくろく)・東部地域は山梨赤十字病院と富士吉田市立病院の2カ所だけだ。
 山梨大医学部産婦人科学教室の平田修司教授によると、産婦人科の医師が減った理由は二つある。04年に新しい臨床研修制度が始まり、医学生は大学を卒業後、2年間の臨床研修が義務づけられた。都会の医療機関を研修先に選ぶ傾向があるのに加え、激務の産婦人科の実態を知って、将来の選択肢から外すようになった。さらに、出産時のトラブルで産科医を相手取った医療訴訟が相次ぎ、なり手はますます少なくなったという。
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 産科医不足の状況は他県でも同じで、県外から来てもらうのは難しい。県は産科医を目指す学生に奨励金を設けるなどして、産科医不足の解消を狙う。
 平田教授によると、その成果からここ数年、産科医を目指す医学生は徐々に増えてきているという。この状況を維持できれば、将来的には必要な医師数を確保できるとみている。だが、当面はセミオープンシステムでやっていくしかないという。



引用元:
産科医減少どう乗り切る(朝日新聞‎)