魚の油に含まれるEPAやDHAなどの脂肪酸の健康効果や、魚油を効果的に摂取する調理のコツなどを紹介してきたこのシリーズ。今回は、特に女性にとって嬉しい魚油の効能について紹介する。
イワシ、アジ、サバといった青魚やマグロに含まれる油は働く女性が積極的にとりたい油だ。前回もお伝えしたように、魚の油にはEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といった「オメガ3」脂肪酸が多い。このオメガ3に、女性に嬉しい効果がいくつもあるのだ。
女性特有のメンタル不調の改善に効果的
「オメガ3、特にDHAは脳や神経細胞の活動に必要な脂肪酸。知能に影響し、うつやイライラを改善するというデータもある」と、オリーヴァ内科クリニック(東京都世田谷区)の横山淳一院長は話す。
まず、“女性特有のメンタルの不調”に効く。
PMS(premenstrual syndrome=月経前症候群)といって、生理の前にイライラしたり、気分が沈んだりする女性は少なくない。働く女性にとっては大きな悩みだ。テヘラン大学で行われた研究から、このPMSによる気分の落ち込み、不安感、集中力の低下などをオメガ3が改善することがわかっている[注1]。
22〜51歳の男女33人がオメガ3(EPAとDHA)のサプリメントを35日間のみ、その前後で心理テストを受けた研究でも、摂取後は活気が増した一方、怒り、不安、うつなどネガティブな感情はすべて軽くなっていた(グラフ参照)。
生まれてくる子どもの脳の発育も助ける
これから子どもを持ちたいと思っている人は、妊娠中に魚油をとると、生まれてくる“子どもの脳の発育を助ける”という研究があることも知っておいてほしい。
妊娠18週から出産3カ月後まで、341人の妊婦にタラから取った魚油10mlかコーン油のサプリメントを毎日のんでもらった。子どもが4歳になった時点で知能テストを受けさせると、魚油グループのほうが点数が高かったという[注2]。
今の時期にありがたい“冷え”改善効果
続いて、身体に対する効果を見てみよう。今の季節にありがたいのは“冷え”の改善効果だろう。
「魚油は血液をサラサラにし、血行を良くする。毛細血管の隅々まで血液が届くようになることで、手足の冷えが改善する」と横山院長は説明する。
そのメカニズムは血液中の血小板や赤血球への作用だ。体内に入ったオメガ3は細胞膜などの材料に使われる。血小板の細胞膜にオメガ3が増えると、血小板の働きが抑えられて血液が固まりにくくなり、赤血球の細胞膜に増えると赤血球が柔らかくなる。実は「毛細血管の末端は赤血球よりも直径が小さい」と横山院長。そのままでは通れないが、柔らかくなった赤血球が変形し、細い毛細血管の先までスムーズに血液が流れるようになるわけだ。
何と言っても嬉しい! ダイエット効果
さらに、魚油には“ダイエット”効果も期待できる。「油は太る」と思われがちだが、前回もお伝えしたように、体内に入った油はそのまま体脂肪になるわけではない。魚油のオメガ3はすい臓から出るインスリンとの関わりから、むしろダイエットに役立つ。
インスリンは血液中の糖(血糖)をキャッチして筋肉や脂肪細胞に運ぶ役割を持っており、必要以上に分泌されると太りやすくなる。最近よく聞く「ベジタブル・ファースト」(野菜を先に食べる)ダイエットも、先に「食物繊維を胃に入れる」ことがポイント。糖の吸収を食物繊維に邪魔させることで血糖値の上昇をゆるやかにし、インスリンの分泌を抑えようという理屈になっている。
肉に多い飽和脂肪酸をとりすぎると、インスリンの効き目が悪くなり、その分泌量を増やす可能性が高いとされている。一方、魚油のオメガ3は「アディポネクチンというホルモンを増やし、逆にインスリンの効き目を良くする」と横山院長。効き目を良くすることでインスリンの分泌量が抑えられ、太りにくくなる。
ちなみにアディポネクチンとは、これ以外にも血管を修復して生活習慣病を予防し、アンチエイジング効果もあるとして注目が高まっている「善玉ホルモン」だ。10人の女性に魚を食べることで大量のオメガ3をとらせた試験では、4週間後にアディポネクチンが増えていた[注3]。
魚油は“食べすぎを抑える”ことも確認されている。最近の研究で、太った女性たちに12週間魚油をとってもらうと、とらなかった人たちよりも摂取カロリーが減っていた[注4]。
オメガ3を手軽にとるならサプリメントで
このように魚油は、PMS、うつ、冷え、肥満など、多くの女性の悩みに効く。働く女性は積極的に魚を食べるべきだろう。
問題は、第1回でも触れたように魚油、特に健康メリットをもたらすEPA、DHAは酸化されやすく、酸化されたものはかえって健康にデメリットとして働くこと。「魚、特にEPAやDHAを多く含む青魚は、日持ちしないなど扱いにくいため、働く女性は青魚を食べる機会が非常に少なくなっている。そういう人が酸化されていないEPA、DHAをサプリメントでとることは賢い摂取法といえる」と横山院長は話す。 この人に聞きましたオリーヴァ内科クリニック院長 横山淳一先生 1973年、千葉大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学内科学教授を経て、2013年に「オリーヴァ内科クリニック」を開設。日本糖尿病学会認定医・指導医。地中海文化に詳しく、日本における「地中海食」研究の第一人者として知られる。近著に『炭水化物を食べながらやせられる! 地中海式 世界最強の健康ダイエット』(SB新書)。
引用元:
ダイエットにも、冷え・PMSの改善にも!女性の強い味方 「魚油」の秘密(ライフ総合(日経ウーマンオンライン(日経ウーマン)))